近年、個人投資家の間で人気を集めている「株主優待」。企業の製品やサービスがもらえたり、割引が受けられたりと、魅力的な特典が満載です。しかし、株主優待制度がどのように始まったのか、ご存じの方は意外と少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、株主優待制度の起源から発展、そして個人投資家にとってのメリットまで、ファイナンシャルプランナーの視点から分かりやすく解説します。

株主優待の起源は鉄道会社?
株主優待の起源には諸説ありますが、有力なのは明治時代の鉄道会社が始めたという説です。1899年には、東武鉄道が株主に全線無料パスを配布したという記録が残っています。その後、他の鉄道会社も追随し、株主優待制度が広まっていきました。
高度経済成長期を経て多様化
戦後、運輸・興行・観光分野の企業を中心に株主優待が広まりました。高度経済成長期に入ると、製造業も自社製品を株主に提供するようになり、株主優待は多様化していきました。
バブル期には、株価の値上がり益と株主優待の両方を目当てに投資する個人投資家が増加。バブル崩壊後は、長期保有を促す目的で、保有期間に応じて優待内容が充実させるケースなども増えて、株価対策として株主優待を導入する企業も増え、現在に至ります。
日本で独自に発達した株主優待制度
海外でも、株主向けに割引や特典を提供する企業はわずかに存在しますが、株主優待という形で、多種多様な自社製品やサービスを株主に贈る制度は、実は日本独自の文化と言えるようです。海外の株主還元は、配当金を重視する傾向が強く、グローバル化の流れの中で海外投資家の株主比率が高い大企業を中心に株主優待を廃止する動きもここ数年見られました。しかし、ここ2024年頃から、また流れが変わり、株主還元を強化する目的で、株主優待を新設したり・充実させる企業も増加しています。
個人投資家こそ株主優待を活用しよう!
株主優待は、大口投資家よりもむしろ、小口の個人投資家にとって大きなメリットがあります。なぜなら、以下のような利点があるからです。
- 投資の楽しみが増える : 株主優待は、企業の製品やサービスを実際に体験できるため、投資の楽しみが広がります。
- 生活費の節約になる : 食料品や日用品、レジャー施設の割引など、生活に役立つ優待も多数あります。インフレのご時世なので大助かりです。
- 長期投資のモチベーションになる : 株主優待を目当てに、長期的な視点で投資を続けることができます。
- 小口の株主のほうが有利 : 株主優待制度において、少ない株数の方が優待利回りが高くなるケースが多いです。保有株数に応じて段階的に優待内容が増加する場合が多いものの、必ずしも保有株数に比例して優待価値が上がらない為です。
例:ある飲食チェーン店の株主優待
A:100株以上保有で:年間2,000円相当の食事券 ←BやCより有利!
B:500株以上保有で:年間5,000円相当の食事券 ←Aの5倍の株数で優待は2.5倍。
C:1,000株以上保有で:年間8,000円相当の食事券 ←Aの10倍の株数でも優待は4倍。
さらに、NISA(少額投資非課税制度)を活用すれば、利益が非課税になるため、さらにお得です。
賢く株主優待を選ぶポイント
数多くの企業が株主優待を提供しているため、どれを選べば良いか迷ってしまう方もいるかもしれません。そこで、賢く株主優待を選ぶためのポイントをいくつかご紹介します。
- 自分のライフスタイルに合った優待を選ぶ: 日常的に利用できるものや、趣味に合った優待を選ぶと満足度が高まります。
- 優待利回りもチェックする: 優待の価値を金額に換算し、投資金額に対する割合(優待利回り)を計算してみましょう。
- 企業の業績や株価も確認する: 優待だけでなく、企業の成長性や安定性も考慮して投資判断を行いましょう。
株主優待は、投資の魅力と生活の豊かさを同時に叶えてくれる制度です。ぜひ、あなたにぴったりの株主優待を見つけて、賢く活用してください。
この記事を書いた人
桐山 昌也
株式会社ライトオブライフ 代表取締役 ファイナンシャルプランナー(FP)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)・MBA(経営学修士)
京大卒、銀行・メーカー勤務を経て、現在大阪を中心に独立系ファイナンシャルプランナーとして活動。「出張型FP」・「最適なアドバイスのできる独立系FP」・「サポートの頼れる実務的FP」を特徴としている。
ライフプラン相談・家計改善は「ライトオブライフのFP」へ https://light-of-life.jp/profile/