経済的自立と早期リタイアを目指す「FIREムーブメント」が世界中で注目を集めています。「Financial Independence, Retire Early(経済的自立と早期退職)」の頭文字を取ったこの生き方は、従来の働き方や人生設計に一石を投じています。大阪を拠点とする独立系ファイナンシャルプランナーとして、特に若い人たちからFIREについて話題に上ることが増えたように感じます。今回は、FIREムーブメントの歴史、意義、そして種類について解説します。

FIREムーブメントの誕生と歴史
FIREの概念は1992年に出版された「Your Money or Your Life(邦題:お金か人生か)」という書籍がきっかけとされています。著者のヴィッキー・ロビンとジョー・ドミンゲスは、シンプルな生活と賢い投資によって若くして経済的自由を達成できると提唱しました。
しかし、FIREが本格的なムーブメントとして広がったのは2010年代、特にリーマンショック後の価値観の変化とインターネットの普及が契機となっています。ブログやSNSを通じて成功事例が共有され、多くの人々が「働き続けるだけが人生ではない」という新たな視点に触れることになりました。
FIREムーブメントの意義
FIREの最大の意義は「経済的自由による人生の選択肢の拡大」です。これは単なる「早く仕事を辞める」ということではありません。私がFP事務所で常にお伝えしているのは、FIREとは「強制的に働かなければならない状態からの解放」であり、その後の人生で真に価値あることに時間を使えるようになることです。
また、FIREは消費社会への一種のカウンターカルチャーとしての側面も持ちます。「稼いで消費する」という循環から脱し、本当に必要なものは何かを考える機会を提供しています。
FIREの主な種類
FIREには実践者のライフスタイルによっていくつかの種類があります。
贅沢(Fat)⇔質素(Lean)、完全リタイア⇔セミリタイア(仕事はする)の2つの軸で構成される4象限に4つのFIREが区分されるイメージです。
4つのFIRE
・Fat FIRE:比較的豊かな生活水準を維持しながらの早期リタイア。一般的な退職生活と同等以上の出費が可能。(贅沢 & 完全リタイア)
・Lean FIRE:徹底的な節約と最小限の生活費で達成するFIRE。自由を得るためにミニマルな生活を選択。(質素 & 完全リタイア)
・Barista FIRE:完全リタイアではなく、パートタイムの仕事や趣味を仕事にして少額の収入を得ながら生活する形態。(質素 & セミリタイア)
・Coast FIRE:若いうちに十分な老後資産を形成し、その後は複利の力に任せつつ、生活費のみを稼ぐ働き方。(贅沢 & セミリタイア)
ファイナンシャルプランナーとして強調したいのは、どの種類が「正しい」ということはなく、個人の価値観や状況に合わせた選択が重要だということです。当FP事務所でも、クライアントのライフスタイルや価値観に合わせたFIRE戦略の提案を心がけています。
FIREするために必要な資金、「4%ルール」とは
FIREムーブメントにおける「4%ルール」とは、経済的自立(Financial Independence)と早期リタイア(Retire Early)を実現するための目安となる考え方です。
具体的には、以下の2つの柱で成り立っています。
・年間支出の25倍の資産を築くこと
・その資産を年率4%で運用し、その運用益で生活費を賄うこと
4%ルールの根拠
この4%ルールは、アメリカのトリニティ大学が発表した「トリニティ・スタディ」という研究がもとになっています。この研究では、株式と債券を組み合わせたポートフォリオから年間4%を取り崩しても、30年間資産が枯渇しない確率が高いことが示されました。
なぜ4%なのかというと、一般的に株式市場の平均的な年間成長率からインフレ率を差し引いた数字が、おおよそ4%程度になると考えられているためです。これにより、資産を使い果たすことなく、半永久的に生活費を得られるという理論です。
4%ルールは、FIREを実現するためのシンプルな目安として非常に有効ですが、あくまで理論上の話であり、実際の運用や生活には様々なリスクが伴います。そのため、このルールを参考にしつつも、自身のライフスタイルやリスク許容度に合わせて柔軟に計画を立てることが重要です。
日本特有の環境を考慮したFIRE戦略
日本でFIREを実現するためには、アメリカなど発祥国とは異なる環境を考慮する必要があります。独立系ファイナンシャルプランナーとして、以下のポイントを特に重視しています
- 年金制度の活用:日本の年金制度を踏まえたプランニングが重要です。60代以降の年金受給を見越した「ブリッジ期間」の資金計画が重要となります。
- 税制優遇の活用:iDeCo・NISA・小規模企業共済などの税制優遇制度を最大限活用することで、資産形成を効率化できます。
- 医療保険制度の理解:国民健康保険や後期高齢者医療制度など、日本の医療保障制度を理解し計画に組み込むことが不可欠です。
FP事務所での相談業務を通じて感じるのは、日本ではがセミリタイアが現実的で実践しやすいという点です。完全に働かないというよりも、好きな仕事や社会貢献活動に取り組みながら、経済的な余裕を持つというアプローチが日本人の価値観に合致しやすいのです。
FIREを実現するための具体的ステップ
大阪のFP事務所で実際にアドバイスしている、FIREに向けた具体的なステップをご紹介します。
- 現状分析と目標設定:現在の収支状況を把握し、どのようなFIREを目指すかを明確にします。
- 支出の最適化:固定費の見直しや無駄な支出のカットなど、「賢く使う」習慣を身につけます。これはFIREの基本中の基本です。
- 収入の増加戦略:本業でのスキルアップやサイドビジネスの構築など、収入源を増やす工夫をします。
- 投資戦略の構築:長期・分散・積立を基本としながらも、インフレ環境下で実質的な資産価値を保てる投資方法を選択します。
- リスク管理:病気や事故など、想定外の事態に備えた保険や緊急資金の準備も欠かせません。
現在のような変動の激しい経済環境下では、これらのステップを実行する際に専門的な知識やアドバイスが必要になることも少なくありません。そんな時は、特定の金融商品の販売に縛られない独立系ファイナンシャルプランナーに相談することで、より客観的なアドバイスを得られます。
FIREは決して夢物語ではありません。適切な知識と戦略、そして行動力があれば、日本でも十分に実現可能です。あなたの価値観や目標に合った「日本流FIRE」の実現に向けて、専門家としてサポートいたします。
参考
日本証券業協会ウェブサイト「投資の時間」→「とうしくんのギモン」→【第5回】FIREって、なに?https://www.jsda.or.jp/jikan/gimon/gimon_05.html
まんが形式でFIREの基本を解説
FIREを考える上でこれも併せて考えた方が良い概念が「Die with Zero」です。
当社Webサイト「FPの豆知識」の下記のコラムが参考になります。↓
「【最新】平均余命から逆算!健康寿命と「Die with Zero」でデザインする、後悔しない老後資金計画」
https://light-of-life.jp/2025/05/13/lifeplan_update/
ファイナンシャルプランナー(FP)への相談については、以下のコラムも参考にしてください。
【大阪・FP事務所】ファイナンシャルプランナーへ相談する際に役立つコラム一覧
この記事を書いた人
桐山 昌也
株式会社ライトオブライフ 代表取締役 ファイナンシャルプランナー(FP)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)・MBA(経営学修士)
京大卒、銀行・メーカー勤務を経て、現在大阪を中心に独立系ファイナンシャルプランナーとして活動。
「出張型FP」・「最適なアドバイスのできる独立系FP」・「サポートの頼れる実務的FP」・「保険・投資販売しないFP」を特徴としている。
ライフプラン相談・家計改善・資産運用相談は「ライトオブライフのFP」へ https://light-of-life.jp/