「保険で資産運用」をおすすめしない3つの理由 – 独立系FPの本音解説


「老後2000万円問題」や年金不安から資産運用の重要性が叫ばれる今、多くの方が「保険で資産運用」という提案を受けることがあります。しかし、それは本当に安心が得られる正しい選択なのでしょうか?

私は大阪を拠点とする独立系ファイナンシャルプランナー(FP)として、クライアントの資産形成をサポートしてきた経験から、「保険と資産運用は分けて考える」ことが最も効率的で安心への近道であると確信しています。今回はその理由と、より賢い資産運用の方法をお伝えします。

保険料に当惑する女性

理由①:隠れコストが高すぎる

保険商品には様々な手数料が内包されています。契約時手数料、運用管理費用、保険関係費用など、複数の費用が複雑に絡み合い、その全体像を把握することは非常に困難です。

そして、これらのコストは、一般的な投資信託や株式投資と比較して割高になる傾向があり、その分、純粋な資産として増えていく部分が目減りしてしまいます。特に契約初期のコスト負担は大きいことが多いです。

例えば、変額保険の場合、年間1.5~2%程度の運用コストが発生することがあります。これは一見少ないように思えますが、長期運用では大きな差となります。具体的な数字で見てみましょう:

毎月3万円を30年間運用した場合の比較

  • 変額保険(年間コスト2%、運用利回り5%):最終資産額 約1,750万円
  • 低コスト投資信託(年間コスト0.2%、運用利回り5%):最終資産額 約2,400万円
  • 差額:約650万円(27%も損失)

この650万円という金額は、多くの方の老後資金にとって決して無視できない差額です。

変額保険以外の生命保険についても、保険会社は手数料率を公開していませんので不透明なのですが、保険会社の経費率と言える「付加保険料」率を見ると、ネット生保会社のライフネット生命で約19.5~55.6%程度(※1)とされています。

すなわち、あなたの支払う保険料のうち、ざっくり2割以上は、万一の保険金の払い戻しではなく、保険会社の運営経費(保険募集の為の人件費、家賃、広告費、その他保険会社の維持費用等)に使われていることになります。保険料が安いと言われているネット生保でさえこの水準ですから、伝統的な保険会社がより大きな経費率となっていることは想像に難くありません。

莫大な広告費を掛けてTVコマーシャルを行い、保険外交員の高額な報酬を支払うことのできる源泉は、あなたの保険料からの大きな取り分のおかげかもしれません。

理由②:お金を引き出しにくい(流動性の低さ)

資産運用で意外と重要なのが「必要な時にお金を引き出せるか」という流動性です。

保険商品は満期までに中途解約すると元本割れするリスクが非常に高く、特に契約から数年以内の解約では支払った保険料の50%以下しか戻ってこないケースも珍しくありません。また、一部引き出しの手続きも煩雑で時間がかかります。

解約返戻金の減額イメージ(例)

  • 60歳満期の終身保険(35歳契約):月々1万円×60か月(5年)の支払い = 60万円
  • 5年後の解約返戻金:約32万円(支払総額60万円に対して47%も目減り)
  • 10年後の解約返戻金:約82万円(支払総額120万円に対して31%も目減り)

「将来のために貯めているのに、いざという時に使えないなんて本末転倒では?」

確かに死亡保険なら被保険者が死亡したときに保険金は支払われます。しかし、人生には保険でカバーされない予期せぬ出費や投資チャンスが訪れます。そんな時、資金を柔軟に活用できないのは大きなデメリットといえるでしょう。

理由③:保障と運用の二兎を追って両方を逃す

保険の本質的な役割は「リスク対策」です。一方、資産運用は「お金を増やす」ことが目的です。この異なる2つの目的を一つの商品で達成しようとすると、どちらも中途半端になりがちです。

保障と運用を分けた場合の効率性

・【ケースA】月3万円で終身保険(死亡保障3,000万円+貯蓄機能)
・【ケースB】月1万円で定期保険(死亡保障3,000万円)+ 月2万円で投資信託
⇒【ケースB】の方が同じ保障を確保しながら、30年後には約300万円以上の資産差が生まれるケースが一般的です。

「保険は保険、投資は投資」と目的別に分けて考えることが、コスト効率と柔軟性を高める鍵になります。具体的には、必要な保障は掛け捨ての定期保険でカバーし、資産形成はNISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用するのが賢明です。

結論:保障と資産運用は分離して考えるべき

私のFPとしての基本スタンスは、「保障と資産運用は分離して考えるべき」というものです。そして、万一の保障として生命保険の利用を一概に否定するものではありません。

保険:万一の時のリスクに備える(掛け捨ての定期保険などで必要な保障をシンプルに確保)
資産運用:将来の資産形成を効率的に行う(低コストで流動性の高い金融商品を選ぶ)

この「目的別分離の原則」に従うことで、それぞれの目的を最も効率的かつ柔軟に達成することが可能になります。

大阪のFP事務所としてお客様と向き合ってきた経験から言えることは、資産運用は「シンプル」かつ「低コスト」なほど、長期的には成功しやすいということです。世界的なインフレや経済変動の中でも、この原則は揺るぎません。

保険と投資を明確に分け、それぞれの役割を最大化する戦略で、あなたの将来の安心を築いていきましょう。あなたの現状と将来を見据えたライフプランの作成、そしてそれに合わせた保険の見直し、資産運用の方針作成・実行といくつかステップはありますが、専門家であるファイナンシャルプランナーへの相談が、その第一歩となるはずです。

参考・引用

【ライフネット生命】ライフネット生命の特長「保険料の内訳表はこちら」(2024年10月1日現在)
https://www.lifenet-seimei.co.jp/shared/pdf/insurance_table_latest.pdf 
保険料に含まれる手数料が何%なのか。この情報を公開しているのは、日本ではライフネット生命だけ(※)。このような情報開示は、私たちは「生命保険がわかる」情報を提供する、というマニフェストにもとづいています。※ライフネット生命調べ(2018年4月)、とのことです。

【ライトオブライフの出張FPサービス】
出張訪問でお伺いする時間帯は、お客様のご都合に合わせて、できる限り柔軟に対応させて頂きます。例えば、小さいお子様が就寝後、旦那様のご帰宅後がご希望で、22時開始といった訪問も可能です。ご自宅以外のご指定の場所への訪問も可能です。
よくある質問(FAQ)https://light-of-life.jp/faq_1/

老後資金について真剣に考えよう。ただ貯める・残すだけではない老後資金・ライフプランの考え方について、
当社Webサイト「FPの豆知識」の下記のコラムも参考になります。↓
「【最新】平均余命から逆算!健康寿命と「Die with Zero」でデザインする、後悔しない老後資金計画」
https://light-of-life.jp/2025/05/13/lifeplan_update/

ファイナンシャルプランナー(FP)への相談については、以下のコラムも参考にしてください。
【大阪・FP事務所】ファイナンシャルプランナーへ相談する際に役立つコラム一覧

この記事を書いた人

桐山 昌也
株式会社ライトオブライフ 代表取締役 ファイナンシャルプランナー(FP)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)・MBA(経営学修士)
京大卒、銀行・メーカー勤務を経て、現在大阪を中心に独立系ファイナンシャルプランナーとして活動。
「出張型FP」・「最適なアドバイスのできる独立系FP」・「サポートの頼れる実務的FP」・「保険・投資販売しないFP」を特徴としている。

ライフプラン相談・家計改善・資産運用相談は「ライトオブライフのFP」へ  https://light-of-life.jp/


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